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二人芝居用台本 虚構 脚本、長月 桜花

雄二

沙織

所要時間15分程度

 

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雄二「僕はとても幸せな家庭を築いていた自信がありました。

優しい妻がいて、結婚3年目で待望の子供も授かり。平凡ながらも笑顔の溢れる家庭を、僕は精一杯守って来ました。

そこは僕の大切な居場所でした、守り続けなければいけない場所でした。

でも僕は逃げてしまいました、精一杯守ってきたはずの幸せな家庭から。

全てお話しします、僕の地獄を・・・いや、虚構の幸せを」

 

間(以下、明るい家庭)

 

雄二「ただいま」

沙織「おかえりなさい」

雄二「ふぅ、今日も疲れた」

沙織「お疲れさま、今夜はご馳走よ」

雄二「お、いいねー」

沙織「だってあなたが頑張ってくれたから夏のボーナスが出たんだもん」

雄二「あ、その事なんだけど」

沙織「ん?」

裕二「ボーナスで一眼レフのカメラ買いたいなぁ・・・だめ?」

沙織「ボーナスはこの子の為に貯金しておく約束でしょ?」

雄二「そうか・・・うん、そうだよな。生まれてくる子の為にも我慢しなきゃな」

沙織「うん、私も頑張って節約するから。ね?パパ」

雄二「そうだね、ママ」

 

間(以下、二人共暗く)

 

雄二「・・・ただいま」

沙織「・・・おかえり」

雄二「飯は?」

沙織「作ってない、レトルトで済ませて」

雄二「・・・またかよ」

沙織「仕方ないでしょ、妊婦は色々大変なのよ」

雄二「・・・何度も言うようだけど、沙織のお腹の」

沙織「ああもう!小言なんて聞きたくない!」

雄二「沙織」

沙織「もう寝るから!!」

 

間(以下、沙織は明るく、裕二は暗く)

 

沙織「おかえりなさーい」

雄二「・・・うん」

沙織「ほーら、パパにおかえりは?」

雄二「沙織」

沙織「あっ、そろそろミルクの時間でちゅねー」

雄二「沙織!ミルクなんて!!」

沙織「しーっ!この子の前でそんな大きな声出さないで」

雄二「ごめん、でもお前が抱いてるのは・・・」

沙織「ご飯はテーブルの上に用意してあるからね」

雄二「これが・・・ご飯?」

沙織「飲んでくれないなぁ・・・ほらー、ちゃんと飲まないと大きくなれないですよー」

雄二「飲むわけなんて・・・ないじゃないか」

 

間(沙織は普通の主婦のように、雄二は無感情に)

 

雄二「ただいま」

沙織「おかえりー、今日学校であの子がね」

雄二「・・・その話しは今度聞くから」

沙織「そうやって何時もあなたはあの子の事を私だけに押し付けて!!」

雄二「今日は疲れてるんだ、勘弁してくれ」

沙織「あなたはあの子が可愛くないの!?」

雄二「あの子は学校なんて・・・いや、今日は寝る」

沙織「ご飯は?」

雄二「外で済ませて来た」

沙織「それならそれで言ってよ!」

雄二「だってご飯って言ったって・・・いや・・・悪い、おやすみ」

 

間(以下、沙織はあくまでも普通に、雄二は無感情からの爆発)

 

沙織「雄二!大変なの!この子、熱があるみたいで!!」

雄二「そうか、それは大変だな」

沙織「それだけ!?病院に連れてかなきゃ!!」

雄二「・・・もう限界だ」

沙織「え?」

雄二「誰を病院に連れてくんだ?」

沙織「だからこの子を」

雄二「いい加減にしてくれ!」

沙織「どうしたのよ?突然」

雄二「沙織!いい加減に目を覚ませ!僕たちの子は流産したじゃないか!」

沙織「何を・・・言ってるの?」

雄二「お前が手に抱いてるのは僕たちの子供じゃない!ただの人形だ!」

沙織「あなた・・・どうしちゃったの?」

雄二「それに!お前が食卓に毎日用意してる食事だって、ただ料理を絵に描いただけじゃないか!!」

沙織「あなた・・・きっと疲れてるのよ」

雄二「6年耐えた、何時か元の沙織に戻ってくれるんじゃないかって期待して!」

沙織「あなたも病院に行きましょ?それがいいわ」

雄二「沙織、お前が週一で通ってるのはどこだい?」

沙織「育児相談の事?」

雄二「病院だろう!?」

沙織「それは確かにお医者さんもいるけど」

雄二「もう限界だ・・・沙織・・・すまない!!」

沙織「うぐっ!!」

雄二「僕も必ず後で行くから、だからあっちで子供と三人で暮らそう」

沙織「ゆ・・・うじ」

雄二「ごめん、沙織・・・もうこれしか無かったんだ」

 

 

雄二「その後、僕は自分に刃物を突きたてました、でも死にきれなかった。裁判長さん、これが事の全てです。僕は子供も失くし、沙織も失くし、全てを失くしました。

幸せな家庭なんて築けなかった、僕には守れなかった・・・だからお願いです、どうか僕を死刑に!・・・え?情状酌量?懲役刑?そんなのいらない!僕は死にたいんだ!早く二人の所に行ってあげないといけないんだ!!僕を沙織に会わせてくれ!!沙織・・・うう・・・さおりいいいいいいいいいい!!!!」

 

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