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りんごとみかんの聖戦 作、長月 桜花

 

奥山 北日本の出身でりんごをとにかく愛してる

安田 西日本の出身でみかんをとにかく愛してる

 

奥山 「まったく、なんでもいいから果物買って来いなんて部長も急だよな」

安田 「仕方ないだろう、契約先の人が急に入院しちゃったんだから」

奥山 「なあ安田、よくよく考えたら果物屋ってすごいよな」

安田 「ん?なんで?」

奥山 「だってさこのりんごは青森産だぜ?こっちのいちごは福岡産」

安田 「たしかに、こっちのみかんは愛媛産だもんな」

奥山 「それがまとまって売られてるんだから日本の流通システムは大したもんだ」

安田 「まあな、ところで何買ってくよ?」

奥山 「お見舞いって言ったら普通りんごだろ?」

安田 「りんご?りんごは迷惑だろ?ナイフで皮剥かなきゃいけないし」

奥山 「りんごは皮ごとだって食べれるし!」

安田 「入院患者にりんごそのままかじらさせるのか?」

奥山 「じゃあ安田は何がいいんだよ?」

安田 「そんなもんみかんに決まってるだろ」

奥山 「みかんー?そんなチープなもん贈るのか?」

安田 「おい、今なんて言った?みかんがチープだと?」

奥山 「みかんなんて家のこたつで暇な時に食べるもんだろ」

安田 「みかんは健康食だぞ、相手の事を考えてる証拠じゃないか!」

奥山 「とにかくみかんはないわー、冷凍させて旅行にでも持ってけって感じだわ」

安田 「りんごこそないわ、引力の発見時が奴の唯一の見せ場だわ」

奥山 「おい、りんごを悪く言うなよな!?」

安田 「お前こそみかんをディスってんじゃねえぞ?」

奥山 「絶対にみかんよりりんごの方がみかんより人気あるね!」

安田 「んなわけ無いだろ、みかんは国民食だぞ?」

奥山 「言ったな?じゃあ白黒ハッキリさせようじゃないか!」

安田 「どうやってよ?」

奥山 「俺はこう見えてもSNSのフォロワーは5万人いる」

安田 「奇遇だな俺のSNSのフォロワーもそれくらいだ」

奥山 「俺がそこでりんごとみかんどっちが好きかのアンケートをとる」

安田 「待て、それはフェアじゃないだろう」

奥山 「なんでだ?」

安田 「そもそもりんご派のお前が主催のアンケート結果なんて信用出来ない」

奥山 「俺が誘導したり回答操作したりすると思ってんのか?」

安田 「そもそもお前はいつもどんな事を呟いてるんだ?」

奥山 「りんごの事だ!」

安田 「ますますダメだ、そんなんフォロワーはお前に気を使ってりんごに一票を投じるに決まってる」

奥山 「じゃあどうすればいい?」

安田 「こんなのはどうだ?これからお互いのSNSでそれぞれりんごとみかんへの想いを投稿しまくって最終的にそれでフォロワーが増えた方が勝ち」

奥山 「なるほど、それなら平等だな」

安田 「もし、みかんが勝ったら二度とみかんの事をディスるんじゃないぞ」

奥山 「ふん、みかんが勝つなんてありえない。冬しか出番が無いような果物にはな」

安田 「許せん!これはもはや戦争だ!」

奥山 「まあ、せいぜい頑張りな」

 

安田

それから5年が過ぎた

 

奥山 「なあ安田、聞こえるか?」

安田 「ああ、聞こえてるよ」

奥山 「まさかあの時の言い争いが日本を二分する内戦に発展するとはな

安田 合わせて10万人のフォロワー数を舐めてたな、芋づる式に増えて世論が真っ二つに割れたもんな」

奥山 「それも西日本と東日本で綺麗にな」

安田 「りんご派が武力に走った時は驚いたよ」

奥山 「それはみかん派の挑発のせいじゃないか」

安田 「うちらが騒動鎮圧に乗り出した時には既に遅かったな」

奥山 「もう俺たちの手にはおえない状況になってたもんな」

安田 「それよりも何よりも何に一番驚いたかって言ったら」

奥山 「ああ、アメリカと中国がそれぞれに加担して、それが引き金になって第三次世界大戦が勃発した事だよな」

安田 「もう正直なんの為の戦いだか分からないよ」

奥山 「りんごとみかんの戦いだよ」

安田 「奥山、お前まだそんな事言ってるのか」

奥山 「ふっ、冗談だよ」

安田 「しかし、うちらも来るところまで来ちゃった感じだな」

奥山 「ああ、まさか主戦場が宇宙になるなんて、技術の発達も舐めてた」

安田 「そしてうちらはそれぞれの軍のエースパイロットときたもんだ」

奥山 「何がどうしてこうなったのか最早説明もできないわ」

安田 「なあ、奥山・・・投降する気は無いか?今ならまだ間に合う」

奥山 「それはこっちのセリフだ。安田、投降しろ」

安田 「出来るわけないだろう、うちらの言い争いが元でこんな戦いになって犠牲も出て・・・自分だけ投降なんて」

奥山 「そうだな、まあどっちにしろこの戦いはお互いの主力同士の戦いだ」

安田 「総力戦だからな、これに勝った方が勝者って訳だ」

奥山 「あの時お前がすんなりとりんごを受け入れてればなぁ」

安田 「それはこっちのセリフだ、お前がみかんをディスらなければ」

奥山 「まあ今更こんな事言っても仕方ないか」

安田 「きっと戦いはいつかは起こっていたさ」

奥山 「本当に投降する気はないか?」

安田 「無い」

奥山 「なら仕方ないな」

安田 「ああ、仕方ない」

奥山 「俺のZアプダムの火力を舐めるなよ?」

安田 「東軍の赤い悪魔と呼ばれたアプダムか・・・だがな奥山、お前こそうちのミカンゲリオンを舐めない方がいいと思うぜ」?

奥山 「西軍の誇る汎用人型戦闘兵器ミカンゲリオン・・・確かに舐めたら痛い目にあうだろうな」

安田 「ミカンゲリオンの装甲は分厚い、そう・・・みかんのようにな」

奥山 「そんなもの、俺のビームサーベルで叩き切ってやるさ、りんごを切るようにな」

安田 「じゃあ通信を切るぞ・・・手加減なんてするなよ?」

奥山 「そっちこそな、悔いの残らない戦いをしよう」

安田 「奥山・・・勘弁しろよ

奥山 「安田・・・許せ」

 

安田

こうして二機のロボットは剣を交えた

奥山

戦い始めてどれくらいが経ったのだろう?

安田

エースパイロット同士の戦いは熾烈を増していった

奥山

俺は最後に捨て身の攻撃に打って出た

安田

アプダムが突っ込んで来た、奥山がこれで終わらせる気なんだと確信した、こっちもそれに乗ることにした

奥山

ミカンゲリオンがソードを片手に突っ込んで来た、そうか安田・・・お前も同じ気なんだな

安田

お互いの機体が激しくぶつかる、うちはアプダムの操縦席にソードを突き刺した

奥山

凄い衝撃だった、だが俺の勝ちだ、アプダムのサーベルはミカンゲリオンの操縦席に突き刺さった

安田

戦いは終わった、二機の機体はお互いの操縦席に剣を刺し動かなくなった

奥山

ああ、刻が見える・・・出来たら俺の墓にはりんごを備えて欲しいもんだな

安田

そうしてうちらは星になった、それからしばらくして地上でこんな歌が流行した

奥山

アイハブア ミカーン アイハブア アッポー ウーン アッポミカーン

安田

その音楽は世界的に流行し、人々に戦争をやめさせた。音楽の力が世界を一つにしたのだ

奥山

音楽は素晴らしい力を持っている、銃より強い力を

安田

戦争ダメ!ゼッタイ!

 

 

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